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慢性痛治療①:ハイドロリリース注射(筋膜リリース注射)

 超音波(エコー)画像でリアルタイムに筋膜や周辺組織を確認しながら、正確に薬液を注射して筋膜の癒着を剥離する治療です。筋肉の痛みやこりなどの症状を和らげるだけでなく、神経の癒着を剥がすことで痺れを解消できる効果もあります。

 首こり、肩こり、背部痛、腰痛、膝痛、胸郭出口症候群、肩甲背神経痛、手根管症候群など、レントゲンやCT、MRIなどでは診断できない痛みや痺れにも有効※です。当科ではトリガーポイント注射(硬結内注射)も合わせて行っています。

 下の写真の症例は30代女性、当院看護師です。長年続く重度の肩こりで、肩甲骨の可動域制限も認めます。僧帽筋と肩甲挙筋の筋膜をリリースすると、肩こりと肩甲骨の可動域が同時に改善し、1ヶ月以上効果が持続しました。難治性の場合は、装具療法やリハビリ、姿勢矯正も行います。効果には個人差があります。

慢性痛治療②:高周波療法(高周波熱凝固法、パルス高周波法)

 高周波療法は、針の先端から高周波電流を痛みの原因となっている神経に流し、痛みを遮断あるいは緩和する治療です。局所麻酔薬による神経ブロック治療で一定の効果がみられる場合に行う治療で、高周波熱凝固法は半年~1年、パルス高周波法は3ヶ月~半年間ほど痛みを和らげることができます。本治療は入院、または火曜午後・水曜午後の外来(予約制)で行っています。

効果には個人差があります。

慢性痛治療③:非観血的肩関節授動術

 五十肩(肩関節周囲炎)は、加齢などによって柔軟性が低下した肩関節周囲の組織が傷ついて炎症を生じ、肩の痛みや運動制限をおこした状態です。薬物療法や注射療法、理学療法(リハビリテーション)などで改善しない場合は、重症化した凍結肩(癒着性肩関節包炎)の可能性があります。当科では超音波(エコー)で凍結肩を診断し、超音波を用いた神経ブロックによって、ほぼ無痛の非観血的授動術を行っています2021年までに120肩に非観血的肩関節授動術を行いました。下の写真やグラフに示すように、術後早期に痛みや関節可動域が改善します。​本治療は3~7日間の入院で行っています。治癒するまでの期間には個人差があります。神経ブロックが効きにくい場合は全身麻酔で行っています。

慢性痛治療④:硬膜外腔癒着剥離術(PEA)

 難治性の腰臀部痛・下肢痛や頚背部痛・上肢痛があり、硬膜外腔造影検査で硬膜腹側や神経根周囲に局所的な癒着と、検査時に再現痛(いつも痛いところに痛みを感じる)を認めた場合に手術の適応となります。PEAは硬膜外腔に挿入した特殊なカテーテルを用いて、生理食塩水や高張食塩水を注入して癒着を剥離し、痛みを和らげる低侵襲治療です。

 当科では、頚椎や腰椎の手術後に残った痛み(脊椎手術後疼痛症候群)、腰部椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、頚椎症性神経根症などによる痛みに対して、これまで36例にPEAを行いました。

効果の持続期間には個人差があります。症状再燃時は再度治療が可能です。

症例:60代女性、右L5神経根症、間欠跛行

 約5年前に他院で腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症の診断で腰椎除圧固定術を受けましたが右腰下肢痛が残存、いくつかの病院で薬物療法や神経ブロック治療を受けたが効果なく、当科紹介となりました。

 硬膜外造影検査で、造影剤が右L5神経根に拡散せず(癒着あり)、右臀部~下肢にいつも感じている痛み(再現痛)を訴えました。術前の歩行テストでは、右臀部の痛みにより杖を用いて800mしか歩けませんでしたが、術後は杖なしで楽に1,000m歩けるようになりました。

 PEAは低侵襲なカテーテル治療で優れた鎮痛効果と持続性があり、もしまた症状が再燃した場合は再度手術することも可能です。本治療は4日間~3週間の入院で行っています。また難治性腰痛は硬膜外腔の癒着だけでなく、筋・筋膜性腰痛や椎間関節症、仙腸関節症、椎間板症などを合併していることがあります。当科では、PEAだけでなくハイドロリリース注射や高周波熱凝固法、パルス高周波法、椎間板内酵素注入療法なども行って、積極的に痛みを和らげながらリハビリを行い、健康で丈夫な身体づくりを目指しています。

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